台所の引き出しを整理していると、彼は錆びた小さなナイフを見つけた。刃は欠け、柄は黒ずんでいて、どこか不気味な雰囲気を放っていた。捨てようかと迷ったが、なぜか手に持ったまま眺めてしまう。すると、指先に冷たい感触が走り、頭の中に知らない女の笑い声が響いた。
その夜、眠りに落ちた彼は奇妙な夢を見た。暗い部屋で、そのナイフを握った女がこちらを見つめている。目が覚めると、手にナイフが握られていた。驚いて投げ捨てたが、次の朝にはまた枕元に置かれている。それ以来、毎夜、女の笑い声が近づき、ある晩、ベッドの端にその女が座っている影を見た。彼はもうナイフを捨てる勇気すら持てない。


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