玄関のドアを開けようとした彼は、鍵が妙に重く感じた。錆びた古い鍵を回すと、カチャリと乾いた音が響き、なぜか背筋が寒くなった。家に入ると、どこかから同じ音が聞こえてくる気がして、鍵を手に持ったまま耳を澄ました。その夜、眠りに落ちる前、またカチャリと音がした。

翌朝、鍵はテーブルの上にあったが、錆がさらに広がっている。夜になると音が頻繁になり、玄関だけでなく部屋の中からも聞こえてきた。ある晩、目を覚ますと、鍵がベッドの横で揺れ、音が耳元で鳴り響いていた。彼はもう鍵を触れなくなった。