祖父から聞いた話です。
昔ある病院に足の悪い女の子がいました。女の子は車いす生活のために
一人の若い看護婦がつきっきりで世話をします。女の子はその看護婦が大層好きで
「おねえちゃん、おねえちゃん」と
とてもなついておりました。看護婦の方もそんな女の子を可愛く思い、
わが妹のように世話をしてやりました。こうして女の子と看護婦は仲良く過ごしていたのですが、
女の子にはひとつだけ不満なことがありました。それは一人ではどこにも行けないということです。
外の世界にでかけることはありますが、
どこに行くのにも看護婦さんがつきっきりでした。「わたしもひとりで外にでかけてみたい」
女の子は自分で車いすを漕ぎこっそり外にでかけました。女の子は外の世界を楽しみました。
花を見て、公園で遊ぶ子どもたちを見て、
道を歩くおばあさんと話しをして。そしてなんなく病院に帰ってきました。
女の子は自分でちゃんと探検出来たことを
とても誇らしく思いました。しかしその夜看護婦さんにとてもこっぴどく叱られてしまいます。
「事故にでもあったらどうするの!」
もちろん女の子を心配してのことなのですが
女の子は楽しくありません。「わたしだって一人でできるのに。。」
そして看護婦さんは外には自動車がたくさん走っていて
危ないからと女の子にもう一度言い聞かせて二人は寝ました。それから何日か後、病院の子どもたちは公園で遊んでいました。
もちろん看護婦さんもいます。子どもたちは楽しそうにはしゃいでいます。
女の子も楽しかったのですが、
ふとまた街を探検してみたくなり看護婦さんに声をかけます。「ねえ、おねえちゃん、あっちの方に行きたい」
しかし、「今日は子どもたちがたくさんいるから連れて行けないわ」
と断られてしまいます。女の子はムッとして一人で道路の方に行ってしまいます。
車いすで遠ざかっていく女の子の姿を見て看護婦は
「もうっ、だめって言ってるのに」と言ってゆっくり追いかけます。「かんごふさーん」公園の方から子どもたちの声がするので
「ちょっと待ってねー」と言って女の子の方を見ると
道路に飛び出しています。ハッとして看護婦は走り出します。
「ブウウウウウン」女の子は車に気づき看護婦さんが言っていた
「外には自動車がたくさん走っていて危ないから」
という言葉を思い出します。「おねえちゃーんんん」「キキイイイイー」車いすの右側に
バンッと衝撃があり女の子は車いすから投げ出されました。衝撃があった方を見ると看護婦さんが頭から血を流して倒れています。
「おねえちゃんが助けてくれたんだ。。。」そして女の子はこう言います。「これで自由だわ」


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