昔から極度のビビりで、小学生時分などは回りが怖い話を始めようものなら耳をふさいで震えていた。それも教室の隅で体育座りして耳をふさいで目を見開いて震えていたからよっぽどこちらのほうが怖かったと思う。

結局ビビりのまま成人してしまい何かにつけて苦労した。

特に震災の時などは、地元の消防団に所属していたがために行方不明者の捜索に駆り出され気が気ではなかった。なけなしの勇気と度胸と正義感を振り絞って捜索隊に加わったのだが、ユンボで瓦礫をどける作業のひとかき目で、シャベルの中にちぎれた人の半身が見えてその場から動けなくなってしまった。

その後作業に従事したが詳しいことは覚えていない。必死で口で呼吸していたのでマスクの中が不快だったことは印象にある。瓦礫をよけ、遺体が出てきたら仲間を呼んで一緒に運ぶ。

何日も何日もその繰り返し。遺体を見つけてから手の空いた仲間が手伝いに来るまでの間、そのそばでぎゅっと目をつむり待っていた。ほんの数十秒待っていただけだが目を開けると日付が変わって、夢からさめたような感覚が一瞬だけした。

どれくらい日付が変わったころだったか、仲間数人と乗り合わせた車で帰宅途中、ぼんやり車に揺られていると真っ暗な道の途中で車が停まった。運転していた人が、「びしょ濡れの女性がいたから停めた」と言う。

窓の外に目を凝らしてみたが瓦礫の山しかみえず、呼びかけもしてみたが返事もない。その場は疲れて見間違えたのだろうということになり、翌日明るくなってからそのあたりを探すと女性の遺体が出てきた。

自分はビビりだと思っていたのだが、そのことは特に何も感じなかった。