古い家の床下から、封の切られていない手紙が出てきた。差出人も宛先も書かれておらず、ただ「読まないで」と赤いインクで殴り書きされていた。好奇心に負けた彼は封を開けると、中には走り書きのような文字で「見てる、見てる、見てる」と繰り返し書かれていた。気味が悪くなり、手紙を燃やしてしまったが、その夜から異変が起きた。
窓の外から、誰かがじっと見ているような視線を感じるようになった。カーテンを閉めても、背中に突き刺さるような感覚が消えない。ある夜、目を覚ますと、枕元に新しい手紙が置かれていた。「読んだね」とだけ書かれ、赤いインクが滲んでいる。彼は震えながらそれを破り捨てたが、次の朝、また同じ手紙が現れた。今度は「逃げられないよ」と追加されていた。
それ以来、彼はどこへ行っても視線を感じ、手紙が現れるようになった。誰かに相談しようとしても、口を開くたび、背後に冷たい手が触れる気がして言葉にできない。


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