古いアパートの階段を降りていた彼は、下からかすかな囁きを聞いた。一人暮らしのはずなのに、声は「こっちへおいで」と繰り返す。階段の下を覗くと、暗闇に白い顔が浮かんでいた。驚いて逃げたが、次の夜も同じ声が聞こえ、今度は階段の中ほどまで近づいてくる。懐中電灯で照らすと、声は止むが、階段の壁に小さな手形が残っていた。ある晩、声が彼の部屋のドアまで響き、ドアの下に白い指が這うのが見えた。恐怖で眠れず、彼は階段を使わずエレベーターに切り替えたが、夜に階段を降りる足音が聞こえるようになった。友人に話すと、「その階段、昔、誰かが落ちたって噂があったよ」と言われた。彼は引っ越しを考えたが、新しい家でも階段の音と囁きが追いかけてくる。

ある夜、目を覚ますと、部屋の隅に白い顔が浮かび、彼の名前を呼んでいた。彼は悲鳴を上げて逃げたが、背後に足音が響き、ドアが勝手に閉まる音がした。それ以来、夜に階段の音が近づき、彼の背後に冷たい気配が立つ。