4月から新しく仕事を始める若い男の人が、
安いアパートに引っ越してきました。2階建ての古いアパートの、一番端の部屋です。
男の人は、アパートの人に挨拶に回ろうと
一軒ずつ訪ねて行くことにしました。まずは、隣のお宅からということで、
ベルを鳴らしてみましたが、返答はありません。その日は、ほかのお宅に伺って、
挨拶をして回りました。次の日、昨日挨拶ができていなかった
隣の人のお宅に、またベルを鳴らしてみましたが、
やっぱり返答がありません。「忙しい人なのかなぁ」と思い、
また別の日に挨拶に行くことにしました。実家からの荷物も届いて、部屋の中を整理していた時、
古いアパートの部屋には穴がいくつか空いている
ことがわかりました。隣の人の家にも繋がっている壁に、
すこし大きめの穴が空いていたので、「穴が繋がっていないかな」と心配になり、
すこし穴の中を覗いてみましたが、向こう側には赤いポスターが貼っているのか、
とにかく赤いものしか見えませんでした。「安い家だし、仕方ないか」と思い、
男の人はさっさと家の片付けをして、
スーパーへ買い物に行きました。アパートに戻ってくると、
ばったり下の階のおばさんたちが
立ち話をしているところに会いました。隣の人に挨拶ができていないことが気になっていた男の人は、
そのことをおばさんたちに話してみると、
「あ〜あの家の人には、挨拶をしなくていいよ。変な人だから。」
と口を揃えて話すのでした。「どんな風に変なのですか?」と男の人が聞くと、
「あの人、目が赤いのよ。」と答えたのでした。もうおわかりですか?穴の先に見えた、
赤い色は、ポスターではなく、
隣の人の目だったのです。


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