久しぶりに、古い友人と会った帰りのことです。
小学校から高校まで同じだった友人と、
学生時代の話で盛り上がって、
もう夜も遅い時間でした。
友人の運転する車は、私の家へ向かっています。
外に明かりは少なく、人影もありませんでした。
霧の出にくい地域に住んでいた私達は、
その晩、初めて霧を見たのです。
車が真っ白な霧に包まれて、とても不思議でした。
友人も初めての体験のようです。
テレビや写真でしか見たことのない霧に、
2人で小さな子供のようにはしゃいでいました。
しばらくすると、白く濃い霧の中に、
赤い光がぽつり、ぽつりと浮かんで見えるのです。
初めは「綺麗だね」と話していましたが、
だんだんとその得体の知れない光が、怖くなってきました。
「何の光だろう?」
「街灯はなかったはずだし……」
嫌な想像ばかりが広がりました。
きっと友人もそうでしょう。
しばらく沈黙が続きました。
私の家に着く頃には、もう午前1時を過ぎていました。
友人を一人で帰らせるのが不安です。
引き止めるように立ち話をしていました。
赤い光の話にはお互い触れませんでした。
話が途切れ、話題を探していると
「じゃあ帰るね」と友人は車に戻ります。
「さっきの明かり、何だったんだろう?」
思い切って口にすると、心臓が大きく動いて
ドキドキとする音が聞こえてきそうでした。
すると、友人はしばらくじっと私の顔を凝視して、
笑い出したのです。
「さっきの光、すぐに気づかなかったんだけど全部赤信号だよ」
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