とある夏休みの盆、
兄弟は田舎の祖母の家に泊まりに行きました。そこで、兄弟は二人で祖母に内緒で抜け出し、
海に遊びに行くことにしました。祖母の家から歩き、そこは階段を下れば、
砂浜へいける道です。弟がいきなり、「あ!たくさん人が集まって拍手してるよ!
楽しそうだから早く行こうよ!」といって走り出しました。兄は、何故かその人々に違和感を感じましたが、
気のせいだろうと思い弟の後を追いかけました。徐々にその人々に近づくにつれ、
兄は全身に鳥肌が立つのを感じました。ふと目線を下げ人々の足元をみると、
何と膝丈から下が存在しませんでした。よく見ると皆白い着物のようなものを羽織っています。
兄は、焦って引き返したくなるのを堪え、
弟に帰ろうと必死に呼びかけました。が、弟はまるっきり聞いてもいません。
前方の弟はもうその人々の近くまで走っていました。そしてその人々の中の、弟と同年代に見られる少年が、
近づいてきた弟の腕を握りました。とても強い力だったのでしょう、
やっと弟も「普通じゃない」ことに気が付きました。弟は泣きながら思いっきり振りほどこうとするも、
中々外れません。それどころかその人々は、海のほうへと歩いていきます。
弟も引きずられるように海へと歩いていきます。兄は、全力でその少年から弟を救出し、
二人は全速力で逃げ出しました。階段を上がり、道路に駆け上がったところで
兄は海のほうを振り返りました。すると、先程の白装束の人々が
皆こっちを見ながら拍手をしていました。その手をよく見てみると、
掌ではなく手の甲と甲を激しく叩き合わせていました。兄弟が祖母の家に辿りつき、
起きた話を祖母にするとこっぴどく叱られました。何でも、盆になると死者が海から還ってきて、
生きた人を海へ引きずりこもうとするとか。手の甲の拍手も、裏拍手と言い
死者が生者を誘う拍手とのことです。


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