私の友人の父親が、実際に体験した怖いお話です。
これから友人の父親を、Aさんといたします。
Aさんは、某タクシー会社のベテランタクシー運転手で、
もう運転暦35年になるそうです。
そんなAさんは、毎日毎日朝から夜まで運転の日々を送っていました。
そんなある日の事、運転手仲間と休憩所でくだらない話をしていました。
仲間がふと言うのです。
俺な、最近変なんだよ。
雨の日に、必ずと言っていい程見るんだよ。
しかも、決まってあの場所で。
何の事を言っているのか全く分からず、じっと話を聞いていました。
雨の日に、ある坂の曲がりカーブの所で毎回女の人を拾うんだよ。
決まってその人、ある家の前まで送って下さいって言うんだよ。
でもね、その家の前まで送ってお客様着きましたよ、
と伝え後ろを見ると誰も乗っていないんだよ。
後部座席のシートだけが、びしょ濡れなんだよ。と、
奇妙な話をしてくれました。
半信半疑でその奇妙な話を聞いて、また仕事に戻った。
ある雨の日の夜、今日もお客様少なかったな
なんて考えながら車を仕事場の車庫まで返しに行こうとふと気付けば、
仲間が言っていたある坂まできていた。
一瞬背筋がぞくぞくとなり、絶対嘘の話だなんて
自分に言い聞かせながら曲がりカーブまで近づいていった。
その時、まさかの出来事が起きたのだ。
仲間が言っていたように、
曲がりカーブに女性が立っているではありませんか。
そのまま通り過ぎようか迷ったけれど、
お客様だったらいけないしで一旦止まった。
ドアを開けお客様、乗車されますか?送りましょうか?
女性は、お願いしますとだけ答えタクシーに乗り込んだ。
一見普通の女性だが、やたら青白く透き通るような白さで
こんな雨の中、傘もささずにたっていたせいでびしょ濡れだった。
お客様タオルお貸ししましょうか?風邪引きますよ。
なんて声をかけると、大丈夫です。ありがとうございます。
と答え車内は雨の音で包まれた。
お客様そういえば、どちらまで送ったらよろしいですか?と聞くと
仲間が言っていたようにある家の前と言うではないか。
もう、背中が凍るように冷たくなり鳥肌がたったが仕方ない、
分かりましたと言って車を進めた。
もう逃げだしたくて仕方なかったが、女性を家の前まで送った。
お客様着きましたよ、と言いながらそっとミラーを見ると
後部座席には女性は居らずシートだけがびしょ濡れでした。
慌てて車を走らせ車庫まで帰り、
仲間に伝えるとお前もやっぱり体験したか。
あの人な、実は10年前にちょうど雨の日あの坂の曲がりカーブで
車にはねられ帰らぬ人になったみたいだ。
結婚が決まり、報告をしにあの家が実家であの家に帰ろうとした時の
思わぬ事故だったそうだ。
それからというもの、雨の日には必ずと言っていい程
あの坂の曲がりカーブに現れ帰りたかった家まで送って欲しいと言うそうだ。
怖い話だが、何とも言えない可哀相な気持ちになった。と
私も、友人の父親から教えてもらった話です。
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