私がまだ学生時代の頃の怖い話です。
当時、仲よくしている女の子がいたんですが、
彼女は奈良の出身で、菅原氏に関係のある巫女の家系の出。
しかも彼女のお母さんは、いわゆる「見える」人なのだそうで、
彼女によれば、亡くなった先祖の霊の気配を感じたり、
話ができるとのこと。
初めは馬鹿げた話と軽く受け流していましたし、
その女の子が周りの気を引きたいために、
霊感少女を演じているのかと思っていました。
それでも、彼女と付き合っているのは楽しかったし、
私にとってその子の霊感話は、割とどうでもいいことだったんです。
ところが、ある夏休みのこと。
私はその女の子と二人で旅行に行くことになり、
古いお寺や神社、史跡を何日もかけて廻って歩いたんです。
それはとても興味深く楽しい旅でした。
いつもより疲れを感じているのがやや不思議ではありましたが、
単なる夏バテだろうと軽く考えていました。
ただ、いつもは元気いっぱいの彼女まで疲れた表情を見せるようになり、
旅の終盤にはあまり私に話しかけなくなっていたのが気がかりでした。
何か気にさわることをしたのか、
それとも自分と同じように夏バテしたのだろうか…。
そして、ようやく私たちは旅の帰途につくことに。
帰りの新幹線で私たちは、
旅の思い出から自分たちの家族にまつわることまで、
ざっくばらんに様々な話をしました。
でも、私が祖母の思い出を話し始めた時、
みるみるうちに彼女の表情が青ざめていくのがわかりました。
どうしたのかな?と気遣いながらも、
祖母が病院で亡くなった時のエピソードを話しはじめたら、
急に彼女が、私の言葉を強い調子で遮ったのです。
「やめよう!死んだ人の話は、本当に霊を呼んじゃうから!」
彼女の鬼気迫る口調に驚いた自分は、ピタリと口を噤みました。
それと同時に、電流が脳天から背中を突き抜けていくような
激しい衝撃が私を襲ったのです。
それは静電気なんていう生易しいものではなく、
生まれてこの方、体験したことのない痛みでした。
思わず身を竦めた私に、
彼女が声をかけました。
「…ね、だからやめよう。」
それから終着駅に着くまで、私たちは無言のままでした。
彼女は何故、私を襲った衝撃に気付いたのだろうか?
いや、同じタイミングで
彼女も電流のようなショックに見舞われたのではないか?
色々と聞きたいことはありましたが、口を開いてはいけない気がして、
鳥肌が収まらいままじっと我慢をしていました。
あれから何十年も経ちますが、
彼女とは、その時の話を一度もしていません。
そして後に聞いた話ですが、
私の祖母は、医師の誤診によって失命したとのことです。
コメントを残す