ある百貨店の紳士服屋にとても美しい女性の店員がいた。艶のある黒髪と整った顔立ちも綺麗だったが、何より人目を引いたのはその瞳だった。茶色に少し青みがかった宝石のような瞳は、見るものを惹きつけた。その瞳で見つめられた男性は、目を離すことが出来なくなり恋にのぼせ上った。

その中年男性もそんな一人だった。30代半ばにして独身。女性とは全く縁がなかった彼は、気まぐれに服を買いに行ってたちまち彼女の瞳の虜になった。それから休みの度に通い、彼女が勧めるままに有り金はたいて服も買った。

デートにも誘ったが、断られ続けた。それでも諦めず、帰りを待ち伏せし後をつけた。家がわかってからは、一晩中窓を眺めていたこともある。彼女がストーカーと言い出して店に出入り禁止になってからも、彼の情熱は衰えることが無かった。

一人よがりなプレゼントを玄関に置いた。手紙も書き続けた。そして、警察に通報された。彼は接近禁止命令を受けた。手紙やプレゼントが無くなって3か月後、彼女は不慮の事故で亡くなった。居眠り運転のトラックにはねられたのだ。通夜とお葬式には大勢の参列者があったが、彼の姿はなかった。

火葬場へ出棺の際、最後のお別れをしようとした彼女の母親が、異変に気付いた。彼女の遺体から両方の眼球がなくなっていたのだ。いつ抜き出されたのかわからない。遺体のまぶたをこじ開けて、何か刃物で目玉をくりぬいて持ち去った様だった。

すぐに警察に通報された。容疑者としてストーカーの彼の名前が挙がった。彼の自宅へ警官が聞き込みに行くと、応答がなかった。しかし葬儀場の防犯カメラに彼の姿が映っていたことがわかり、警察は逮捕状を持って彼の家へ踏み込んだ。

そこで警官が見たものは、動かなくなった彼の姿だった。うつぶせに倒れてピクリともしない。脈もなかった。仰向けにすると、彼の口の中に何かが入っているのが見えた。取り出されたそれは、目玉だった。

少し青みがかった茶色の美しい目玉が2つ彼の喉につまっていた。なぜ彼が眼球を口にしたのかはわからない。ただ顔には無数のひっかき傷があり、彼が窒息して苦しんだ様子だけが伺えた。

きっと彼は彼女の瞳を食べてしまいたいほどに愛していたのだろう。その後眼球は彼女の遺族の元へ返された。