これは、私の父が体験した話です。
私の父は会社員で遅くまで仕事をしていたため、
帰りはいつも日が完全に落ちた頃でした。会社の最寄り駅までは車通勤だったため、
駅近くの月極駐車場を毎日利用していました。その駐車場のすぐ近くには古びたトンネルと
駐車場の敷地内には、草のシダに覆われた
廃墟のような建物が建っており、
その建物の影になるせいもあってか、
昼間でも薄暗い雰囲気でした。実際に私も行ったことがありますが、
特に霊感がない私でもなにか嫌な雰囲気というか、
あまり長居したくない雰囲気を感じました。その日は雨でした。
父は仕事後、いつものようにその駐車場に向かいました。駐車場に着き、清算を済ませようとした時、
視界の片隅になにかがうつりました。父はそのなにかが映った方向に目を向けました。
父の目線が向いた先、廃墟のような建物の下の角に
女性が顔をうずめて座り込んでいました。父がなぜ女性だとわかったかというと
雨の中傘もささずに黒くて長い髪が水を含み
お風呂上がりのように後ろに垂れ下がっていたから
だといいます。最初、父はその女がなんらかの理由で
体調が悪くなってしまいうずくまっているのではないか
と考えました。そう思った父はその女が心配になり
声をかけようと歩み寄りました。少し近づいたところで父はある異変に気付きました。
その女はなにかをひたすらにつぶやいていました。父は足を止め女がなにを言っているのか
聞き取ろうと耳を傾けました。そして聞こえてきた言葉に父は
一瞬にして恐怖を感じたと言います。「殺してやる殺してる殺してやる。。。」
女はひたすらに「殺してやる」と
呪文のように唱え続けてました。父は、その女が普通ではないと気付き
急いで車に乗り込みました。父はもう一度気になって女がいた場所を確認しました。
しかし、女がいた場所には誰もいなく
そこには降りしきる雨が水たまりになっているだけでした。はたして父がみたものはなんだったのでしょうか?


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