僕が中学生の頃の怖い話です。

夏休みの期間を利用して、
当時通っていた塾の合宿に参加した時に
奇妙な体験をしました・・・。

塾の合宿なので、当然の事ながら
僕らは毎日勉強をしていたのですが、
古い旅館には僕達しか利用客は存在せず、
ほとんどの客室は電気が消えていて、
どの部屋かは判断できませんでしたが、
曰く付きの部屋が存在するらしいと
生徒たちの間で噂が広まっていました。

空室がこんだけあるのだから、
わざわざ曰く付きの部屋を旅館側が用意するはずがない
とみんなは感じていたので、僕も気軽に噂話を楽しんでいました。

そんな噂も日々のカリキュラムの中で、
僕達の間で話題になったのは最終日に
塾の粋な計らいで肝試しをした時位で、
誰もがただの噂話なんだなと思い始めていた。

肝試しから戻った僕は真っ先に部屋に帰ると、
電気が付いたままの部屋の壁や天井は極彩色に彩られていて、
時折ひらひらと舞う姿が目の前を通り過ぎましたが・・・。

少しすると他の同室の生徒も部屋に帰ってきて、
立ち尽くす僕の視線の先に目を向けて同様に凍りついたのです。

異変に気がついた塾講師が急ぎ足で近づいてくる。
僕らは状況の説明と、このままでは寝ることが出来ないことを伝えました。

窓を開けっ放しで肝試しに出掛けてしまったため、
大量の蛾が迷い込んでいたからである。

塾講師と僕たちは朝方近くまで蛾の退治と清掃をしてから
出発までの僅かな時間寝ることにした。

僕は深い眠りの中で何か違和感を感じて起きてみると、
朝食時間にはまだ早いはずなのに廊下からすすり泣く声と、
女子のざわつきを感じた。

僕は眠い頭を何とか叩き起こし、
状況を確認するために全く話したことのない女子に話を聞くと、
彼女たちの宿泊していた部屋では
誰かに監視をされているような目線が常に有った
という。

そして、早めに目が覚めた数人が荷造りの最終確認をしていると、
行かないで・・・」と、聴いたことのない女性の声がし、
その直後に今もすすり泣きをしている少女が同じように
行かないで・・・」を繰り返したまま、
誰の問いかけにも反応をしないと言うのである。

僕は仕方なく彼女に近づくと、
試しに彼女の肩を掴んで目を覗き込もうとした。

すると僕の手が彼女の肩に触れる前に、
僕は突然右腕を掴まれた
・・・

その直後に身体の中を何かが通り過ぎるような
奇妙な感覚
に凍りついた。

僕は右腕を掴まれた瞬間、自分の右腕を凝視した・・・
誰も掴んでいないのである。

僕は状況が良く飲み込めないまま、
泣いていた彼女に目を向けてみる。

彼女は彼女の肩に置かれるはずだった僕の両腕に戸惑いながら、
真顔で「何してるの?」と訊いてきた。

そんな彼女の言葉に周りの女子たちもきょとんとして、
今までの経緯を彼女に説明をした。

一通り説明を聞いた彼女は明るい笑顔で
幽霊なんているわけ無いでしょ?」と笑う。

僕たちは何が起きたのか理解できぬまま、
朝食の時間をしれせる塾長の雄叫びで割れに返った。

僕は昨日の蛾のせいで寝不足のため、
幻覚でも見たのだろうと思い直し、
一旦部屋に戻ろうとして、手首に出来た真新しい痣に気がつく。

その痣は小学生の手のような大きさのカタチだった。