教師をしていたころの怖い話です。
担任として、生徒のところに家庭訪問に行っていました。
4月始めにある一般的な家庭訪問で、
クラスの生徒の家を一軒ずつ回るというものです。
その日は、ある女の子のお宅を訪問しており、
玄関から奥の部屋に案内されました。
お父様が対応してくださったのでした。
というのも、その生徒のお母様はだいぶ前に他界されており、
死別のようでした。
もちろん、そのような事情はすでに知り得ていたことなので、
私としてはゆっくりお父様とお話しをする予定でいました。
私が案内された部屋は奥の和室で、
お母様のお位牌のある仏壇の間でした。
お母様の写真は天井のところに飾られており、
優しい眼差しで笑顔が素敵でいらっしゃいました。
私は、お父様が電話のために席をはずされたときに、
そっと手をあわせました。
お父様はとてもお話好きで、
教育熱心な方だとわかりました。
色々とお子さまのことを案じていらっしゃるのも伝わってきました。
そんなとき、お部屋の戸が開きました。
お母様の実母でいらっしゃるかた、
つまり生徒のおばあ様がお茶をいれてきてくださったのでした。
お母様の実母、とすぐにわかったのには理由がありました。
戸を開けた瞬間のおばあ様の笑顔が、
お部屋に飾られている生徒のお母様のお写真と同じだったからです。
優しいおばあ様にも大切に生徒が育てられていることがわかり、
担任としてはほっとしたのを覚えています。
ところがです。
お父様が急に再婚をしたいという話をし始めたのです。
私としては、話の急展開に驚いてしまったのですが、
ふと、上を見て血の気が引いたのです。
お母様のお顔が、明らかにさきほどとは違うのです。
怒っているのです。
私は写真を見れなくなってしまいました。
すると、そこへ再びおばあ様が笑顔でいらっしゃいました。
その笑顔と、上の写真は明らかに違うのです。
私は、お父様に別の話を振りました。
ふと、写真を見上げると、お母様は無表情でした。
お母様も、私の家庭訪問に加わっていらしたのだと思います。
お母様は、私に何か伝えたかったのかもしれません。
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