これは、私の友人の息子の
カズくん(仮名)が体験したことでした。友人は結婚する前から、敬虔な仏教徒でした。
いつか自分の息子にも仏教徒になって欲しかったのです。そしてカズくんが六歳になった頃、
彼は初めて母親と一緒にお寺へ参拝することなりました。朝から出発したカズくんと母親は、
電車を乗って3時間が掛かった後、
バスに乗り移って1時間が掛かりました。ようやくたどりついたのは
街はずれた畑だらけの田舎でした。すると、遠くないところから
カズくんのお爺さんとお婆さんの姿が見えました。実は、ここは母親の故郷であり、
お爺さんとお婆さんの住む場所でした。母親はカズくんが大きくなったら
ここに連れていくと決めていました。嬉しそうにお爺さんとお婆さんを抱き着くカズくんを見て、
母親も嬉しそうに笑っていました。カズくんはすぐにお爺さんとお婆さんの
家に行きたかったのですが、
先ずはお寺に行かなければならないと母親に言われたため、
仕方なくカズくんは母親と一緒にお寺へ向かいました。お寺と言っても小さな民家のような見た目で、
中には古そうな仏像が置いています。仏像は全体的に変色しており、傷跡は所々見えています。
カズくんは思わず小さな声で汚いと言いました。母親が何かを言ってから軽く頭を下げて、
カズくんに挨拶をするように肩を叩きました。すると、カズくんが頭を上げると知らない森の中にいました。
母親の姿はどこにも見えなく、
周りは白い霧に包まれている竹の森のようです。カズくんは試しに真っすぐを走ってみましたが、
走っても走っても道は続いていくばかりでした。息切れしながらカズくんは困りきっていました。
その時、声が響いてきました。「私は汚くない・・・私は汚くない・・・」と
低くて太い声が聞こえてきます。カズくんはすぐにそれは仏像の声だと分かりました。
自分は先で仏像の事が汚いと言いましたから。声はカズくんの方へ近づいているかのように
どんどん大きくなり、より低く聞こえます。カズくんは怖くて怖くて泣き出し、何度も謝り続けました。
声はすぐ後ろにいると感じたカズくんは体を丸めました。次の瞬間にカズくんの肩に触れたのは母親の手でした。
気が付けば、カズくんは元の場所に戻っていました。仏像を見ると、なんとなく顔が緩んだ気がします。
仏像は神様に人間の声が伝わるように作られた
という仮説もあります。次からは仏像に向かって参拝するときは、
自分の発言に気を付けるようにしてください。


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