お盆に母の三回忌も近い為、
親戚が家に集まっていた日、
私と兄は辛気臭い雰囲気が息苦しくなり、
夜のドライブに出掛けた時の体験です。

兄は以前働いていたコンビニの閉店が決まり、
常連のお客様に誘われ葬儀屋に入ったばかりでした。

免許を持ってなかった兄は、
普通免許必須の仕事と知り急いで取ったばかりで、
自慢したいのか、良く私を誘ってドライブに出かけてました。

いつものように二人で目的地も決めず
出発した二人でしたが、お盆時期という事もあり、
肝試しと言わんばかりに地元で有名の
『白い服の女性が出る』と有名の道に向かいました。

私と兄はとても仲が良く思考も似ており、
二人とも幽霊やお化けはどちらかと言えば否定派でした。

さらに母が亡くなってまだ数年なので、
その手の冗談は何となくタブーとかって思ってました。

私は兄が葬儀屋に就いた事もあり、
幽霊スポットに向かう事に内心ビビってましたが、
兄から幽霊の話など聞いた事も無かったので
強がって賛成してしまいました。

家から15分程走らせたところにそのスポットはあり、
徒歩では通らないような道でした。

人気が無く、街灯も少ないカーブの多い細道でしたが、
行きはとくに問題なくスポットを通過。

スポットの少し先にある民宿の駐車場に車を止め、
自販機で飲み物を買って休憩する事にしました。

何もなくて安心しきった私は兄に
帰りもさっきの道通って帰ろうよ』と提案し、
兄もノリノリで承諾。

急いで車に乗り、また同じ道を戻る事にしました。

お気に入りの音楽を大きめに流し、
そのスポットまで談笑しながら向かいました。

自分で提案しておきながら、
心の中ではビビったままの私は
スポットを通り過ぎる時に目をつぶってました。

兄に悟られたくない私は大声で歌う兄と
一緒に歌ってました。

スポットを通り過ぎるまで
15秒もかかってないと思いますが、
兄の異変に気付きました。

一緒に歌っていた兄が無言になっていたんです。

そっと目を開けて横目で兄を見ると、
硬い表情でまっすぐ前だけを見つめている兄に
『どうしたの?』と私が聞いても
兄は『別に』としか言わないのです。

そこから数分無言で運転をしていた兄が
急に車のスピードを上げはじめました

先に言った通り、免許取りたての兄は
普段から安全運転をしていて、
車通りの少ないところでも乱暴な運転を
した事がありません

そんな兄が80キロ近くスピードを出しながら
運転していたのです。

異常な空気と乱暴な運転で
パニックになった私は声も出せず、
目をつぶって安全に戻れる事を祈り続けました。

スピードを出していたので、
行きよりは早く家の付近に戻ってこれたと思います。
体感では凄く長く感じましたが。

家のすぐ隣にあるコンビニに
ドリフトするように停車した兄は急いで車から降り、
膝から崩れ落ちました。

大粒の汗をかきながらヒューヒューと
変な息をしてました

コンビニに停車してくれたので、
私は急いで水を買ってきて、兄に飲ませました。

兄が落ち着くのを待ち、話を聞き出しました。

兄は私には言ってませんでしたが、
葬儀屋に勤めはじめてから
既に怪奇現象を何度か経験しており、
幽霊らしき物が見えるようになっていた
のです。

でも、今まで見えてた幽霊は動かないし、
どこも見てないよう虚ろな表情をしていたそうです。

ですが、帰りに通ったスポットで見えた幽霊は
ミラー越しに見たにも関わらず、
バッチリ兄と目が合った
そうです。

いつとの幽霊と違う事に気付いた兄は少し怖くなり、
ちょっとだけスピードを上げたそうですが、
その瞬間に後部座席側の窓に幽霊が飛び移り、
ミラー越しに兄を睨んだ
そうです。

その瞬間から兄は呼吸がし辛くなり、
急がないと死ぬと思った兄は
更にスピードを上げた
そうです。

細道から国道に出た瞬間、その幽霊は居なくなり、
酸欠だった兄は急いでコンビニに停めたそうです。

呪いなのか分かりませんが、
兄はその日から声が掠れたままになってしまい、
身体が持たないと葬儀屋は辞めてしまいました

一歩間違ったら二人とも死んでしまうような
荒い運転を冗談でやるような兄ではないので、
恐らく本当に見えたんだと思います。