Aは今年の春から、格安アパートの一室に越してきて独り暮らしをしていたのですが、部屋に誰か侵入しているような違和感を覚える日々が続いていました。仕事等で外出をする時に閉めていたはずの新居のドアや押し入れの襖が帰宅したら開いていることが度々あり、よく問題になる欠陥工事や地震などによる家の傾きかと思って、専門の人に調べてもらったのですが、どうもそうではないらしい。

オマケに夜中に誰かに覗かれているような気がして眠れないということも度々あったので、これはストーカーでも不法侵入したのではないかと思ったAは、ある夏の日に業者に頼んで盗聴器が部屋に仕掛けられているか調べてもらったら案の定、貰い物の延長コード等から盗聴器が見つかったのだそうです。

一体どこの変質者だ」と不愉快に思い、より確実な証拠を押さえて警察に被害届を出そうと思ったAは、新製品の隠しカメラを購入し、複数ほど新居の中に仕込んで外出時や就寝中にストーカーの正体をつかむために録画することにしました。隠しカメラを仕掛けてからほどなく、ストーカーの証拠映像を録ることができました。

青白く、陰気で薄気味悪い髪の長い女が押し入れから出てくる光景をしっかり映像に納めることができました。新製品にありがちな計画的陳腐化の弊害のせいか、押し入れに入る場面を含めて所々映像は途切れていましたが、ストーカーと思しき女性がしっかり録られていました。

ストーカーは知人の可能性が高いという話を聞いていたこともあり、Aは家族に犯人に心辺りがないか聞くために、電子メールでコピーした動画を送りました。しばらくすると、自称霊感の強い姉からこんな返信メールが来たそうです。

あんた!何て恐ろしいモノを送り付けたのよ!