これは大阪のデパートで、警備をしていた頃の話。警備の仕事の内容は、お客さんを案内したり、出入り口の管理等をするものだ。その日も、他の隊員と交代するため、現場に向かった。
隊員と、お互いに敬礼をし異常無しの報告を受ける。交代した隊員は同じ年齢で、同じく新米の警備員だった。しかし、新入社員の研修とデパートに配属されたのが、私より少し前で、仕事も良く出来た。対して、私はドジで、いつも怒らえてばっかりだった。尊敬もしていたし、頭も上がらなかった。そして、そんな彼をいつか見返してやろうとも思っていた。
私が早く交代したので、彼は、時間潰しに、しばらく留まっていた。
私は、ふと彼の顔を見た。見ると、帽子の上を、黒いものが飛んでいた。彼の頭を中心にして、人工衛星の様にぐるぐると回っている。それは、5㎝位の男の人間の顔だった。顔が、黒く見えたのは、昔の白黒テレビの画面のように、全体がモノクロで色が付いていからだった。
顔には、板垣退助かサンタクロースの様な、立派な髭があり、目付きも、非常に威厳がある。大昔の、それもかなりの歳を取ったおじいさんだ。この人は、守護霊なのか?彼と関わり合いのある人間に違いない。
しかし、なぜ、守護霊は、突然姿を見せたのか?私には、時たま、幽霊が見える事があるので、単なる偶然なのか。それとも、守護霊は、外敵から子孫を守ると言われている。そうなら、私が悪い人間なのか?確かに、霊的なものが、私に見え始めた時と重なっている。仕事も上手くいかず、落ち込んでいた時期だ。周りの人に、悪い影響を与えかねないので、守護霊が警告をして来たのかもしれない。
「じゃあ、おねがいしま~す!」
隊員は、再び敬礼をし、くるりと回って帰って行った。守護霊も、もう見えない。私は彼に、じいさんの事を、話そうかとも思ったが、馬鹿にされるだけだと思いおいた。
一年後位に、彼は会社を辞めてしまった。もう、30年もの月日が流れたが、どこで何をしてるのだろうか?今も守護霊に守られているのだろうか?彼に幸せを祈る。
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