引っ越しの片付け中、彼は押し入れの奥から古いラジオを見つけた。埃にまみれ、コードはボロボロで、とても使える状態には見えなかった。それでも懐かしさから、試しにコンセントに差し込んでスイッチを入れると、ザザッというノイズが響いた後、微かに人の声が聞こえてきた。

雑音に混じって「助けて…ここから出して…」と繰り返す声。気味が悪くなり、すぐに電源を切ったが、その夜から異変が始まった。深夜、寝ていると、枕元でラジオのノイズが鳴り響く。目を覚ますと、そこには何もない。ただ、部屋の空気が重く、誰かが近くにいるような感覚が消えなかった。

翌日、ラジオを捨てようとゴミ袋に入れたが、帰宅するとまた元の場所に戻っている。恐る恐るスイッチを入れると、今度ははっきりと「見つけたよ」と笑う声が聞こえた。その瞬間、背後に冷たい息を感じ、彼は振り返る勇気すら持てなかった。それ以来、ラジオは鳴らないが、彼の耳元で時折、誰かの囁きが聞こえるようになった。