終電を逃した彼は、仕方なく会社近くのマンションで夜を明かすことにした。誰もいないロビーでエレベーターを待つ間、妙な寒気がした。扉が開くと、中は薄暗く、鏡に映る自分の姿がいつもより歪んで見えた。気にせず乗り込み、7階のボタンを押したが、エレベーターは動き出さず、代わりに低い唸り声のような音が響いた。

慌てて降りようとした瞬間、扉が閉まり、照明がチカチカ点滅し始めた。エレベーターは勝手に動き出し、表示パネルが意味不明な数字を点滅させる。止まったのは13階のはずのない階。扉が開くと、そこは真っ暗な空間で、遠くから足音が近づいてきた。彼は必死で閉ボタンを連打したが、足音はどんどん大きくなり、扉が閉まる直前、鏡に映る自分の背後に長い髪の女が立っていた。

なんとか1階に戻れた彼は、息を切らして管理人に事情を話した。すると、管理人は顔を曇らせ、「この建物、12階までしかないよ。13階なんてボタンもないはずだけど…」と言った。それ以来、彼はそのマンションに近づかなくなったが、時折、背後に足音を感じることがある。