山登りの帰りに街灯も車通りも少ない田舎道で迷子になってしまった。スマホも圏外になっていて誰とも連絡がとれない。途方にくれつつ1人でとぼとぼ歩いていると向かい側から車のライトが見えた。チャンスだ!と思い思い切って手を挙げて車を停める。事情を説明したら運転手は愛想よく乗せてくれることになった。
「ありがとうございます。助かりました。」
「この辺は地元の人でも迷うから大変だったろう。君みたいに山登りをする観光客がよく迷子になっているのを見つけるよ。」
「ええほんとうに暗くて大変でした」
車は細い山道をすいすいとくだっていく。運転手の男はこの道を運転慣れしているみたいだった。
「コンビニがあるところまで乗せて行ってくださると助かります。」
「コンビニはちょっと遠いから少し時間がかかるよ。」
「そういえばあなたはどうしてこんな山道を運転していたのですか?」
なんとなく男はどこかに向かう途中といった感じではなかったので聞いてみた。
「夏からは狩猟シーズンだからね、罠を仕掛けて獲物をとっていたんだ。」
男は助手席に置いてあったロープを指差した。その先には所謂トラバサミがついている。
しかしはて、狩猟シーズンは冬ではなかったか?たしか山登りの先輩である友人が教えてくれた。
「そういえば先に山を降りた友人ともはぐれてしまったんです。」
「きっと先に街まで降りてるんじゃないかな。」
その時スマホの電波が戻っていることに気がついた。急いで友人に電話をかけてみる。
するとトランクのほうから着信音が聞こえてきた。
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