おじいさんが夏の暑さに耐えかね、古い扇風機を押入れから出した。埃にまみれ、羽根が錆びているが、スイッチを入れると動き、冷たい風が吹いた。だが、風に混じってかすかな声が聞こえ、「止めて」と囁く。おじいさんは驚いて電源を切り、扇風機を仕舞ったが、夜、独りでに動き出し、風が部屋を満たした。翌日、羽根に赤い染みが広がり、風が冷たくなる。ある夜、扇風機が激しく回転し、白い手が羽根の間から伸びてきた。おじいさんは悲鳴を上げて逃げたが、翌朝、扇風機は元の場所に戻り、染みが床に残っていた。

息子に話すと、「その扇風機、昔、変なことがあったって噂だよ」と顔を曇らせた。おじいさんは扇風機を捨てようとしたが、夜に風が響き、背後に冷気が漂う。… … … あれはまだそばにいるのかもしれない。