雨がしとしと降る、2月の夜のことです。
タクシーの運転手さんが若い女性に呼びとめられて
車を停止しました。
その女性は雨なのに傘もささず、
真冬の夜だというのにコートも羽織らず
裸足に白い長袖のワンピース姿という異様な格好をしていました。
長い黒髪も雨でびっしょりと濡れています。
異様な姿に違和感を覚えながらも
運転手さんはタクシーのドアを開けました。
女性は後部座席に乗り込むと、
うつむいたまま消え入りそうなか細い声で
「○○病院までお願いします」と運転手さんに伝えました。
しかしその病院は、何年も前に廃業して今は廃墟になっているはず。
運転手さんが女性にその旨を伝えても、女性はうつむいたまま
「…○○病院まで…」と繰り返します。
女性の普通でない様子が気になりながらも、気が済むのなら…と
運転手さんは○○病院まで向かうことにしました。
病院に向かう途中も女性は一言も話しをせず、うつむいています。
長い髪の毛が顔にかかっていて、女性の顔や表情もよく見えません。
目的地の○○病院に着くと、
そこはやはり廃墟になっていました。
「お客さん、やっぱりこの病院はつぶれてるよ。他を当たろうか?」と
運転手さんが声を掛けると、
女性は「大丈夫です。ありがとうございました。」と
料金を支払って廃墟となった病院に向かっていきました。
若い女性がこんな場所に何をしにきたのだろう…
とどうしても気になった運転手さんは、女性のあとをつけていきました。
すると女性は「診察室」と書かれた部屋のドアを開け、
中に入っていきました。
運転手さんは女性の入った部屋の前に行き、
「何をしているのだろう」と鍵穴から部屋をのぞいてみました。
その部屋は真っ赤で、ベッドなども置かれていません。
ただひたすら赤い空間のみ。
女性の姿も見えず、
何だか急に怖くなった運転手さんは急いでその場を立ち去りました。
翌日、この話を同僚にすると、
同僚は真っ青になって運転手さんにこう尋ねました。
「ねえ、その女性の目は赤くなかったですか?」
コメントを残す