知人の怖い体験談です。
彼の住むアパートは年代物でしたが、
部屋は1階でベランダではなく
小さな庭に出られるようになっているところが
決め手となって住み始めた物件でした。
その日彼は風邪をひいていて、
自宅のアパートの部屋で横になっていました。
狭いワンルームなので、真ん中に布団を敷いて寝ていると
部屋の全部を見回せる状態です。
正午を過ぎたあたり、彼がまどろんでいると
コツコツとハイヒールのような靴音が近づいてきました。
玄関をドンドンとたたく音が聞こえましたが、
その日に約束はなくまたあまりにも体調が悪かったので
彼は出ないことにしました。
すると彼の部屋づたいに同じようにコツコツと移動する足音が聞こえます。
流し台の上には小さなすりガラスの小窓があり、
そのあたりに靴音が近づいたので何の気なしに視線を向けると、
人の頭のシルエットが見えました。
友人がお見舞いに来てくれたのかもなとぼんやり思っていると、
靴音は玄関から彼の部屋を壁伝いに歩いて
庭のほうへ向かっているのが分かりました。
何度も友人たちを部屋に招いているので、
部屋をよく知った友人が庭に回っているのだろうと
特に深くは考えませんでした。
庭に続く窓はすりガラスの全面窓です。
そこに人影が見えたら声をかけようと靴音を視線で追いました。
全面窓の向こうに見えたのは、
靴音に合わせて頭だけが移動するシルエットでした。
体がないんです。
髪の長い頭だけがすりガラスの向こうを靴音に合わせ少し
上下しながら動いていました。
知人はパニックになり思わず目を閉じたそうです。
ちょうどそのとき靴音がとまり窓にドンッと何かがぶつかる音が。
見えてはいないけれど、脳裏には頭が窓越しに
こちらをのぞこうと頭をつけたのだと想像できたと言います。
しばらく経ってまた靴音が始まり徐々に遠ざかって消えました。
怖くなった彼は電話で友人を呼び出しました。
玄関をあけ迎え入れると友人が
「玄関のドアスコープのところになんかついてるぞ」というので、
外に出て見てみるとそこにはまるで誰かがドアスコープを覗いたかのような
額の脂のあとにみえる痕跡がありました。
靴音が近づいて最初に玄関をノックされたと思ったのは間違いで、
あの「頭」がドアスコープから部屋をのぞいていたんだと気づきました。
庭への窓も外側から見てみるとそれと似た額の跡を見つけたそうです。
その後そういった体験は引っ越すまで1度もなかったそうですが、
あの真昼の来訪者は一体誰だったのでしょうか。
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