人から聞いた、ゾッとして
今も印象に残っている怖い話です。引っ越してきたばかりの町で、
自宅から最寄り駅までの道に
そこそこ活気のある商店街がありました。通り抜ける間にいろいろ目移りしてしまうくらい店があります。
その中にひとつだけ、小さくて古く、地味な店がありました。薄暗いし入り辛いなと思っていましたが、
店主のおじいさんは愛想がよく、前を通るたびに会釈してくれました。ある日通りかかると、
おじいさんが店の外に立っていて「こんにちは」と話しかけてきました。どうやら一人暮らしで寂しいらしく、誰かと話をしたかったようです。
店先で少し話を聞くうちに、いつも優しそうに笑いかけてくれるし
たまには何か買ってみようかと思いました。店には団子やおにぎり、のり巻きなどがおいてあり、
どれにしようか迷っているとおじいさんが
「おいなりさんが美味しいよ」と
いつものようににこにこと笑いながら言ったので、
いなり寿司を買うことにしました。家に帰って食べてみると、確かに美味しいいなり寿司でした。
珍しく細切りにしたスルメが入っているようで、
それが美味しさの秘訣なのかなと思っていました。それから気が向けばいなり寿司を買って食べるようになりました。
しかし、何度か食べているうちに古い匂いがするようになりました。どうやらスルメから匂っている様で、
もしかしておじいさんもボケてきたのかなと心配になり、
店に行き「最近おいなりさんの味が落ちたのではないか」と伝えました。するとおじいさんは寂しそうな表情をして
「材料がもうすぐ無くなる」とつぶやきました。その後も独り言のようにブツブツと何かをつぶやいていたので、
やっぱりおじいさんはボケてきたのだと思い、店に行かなくなりました。それからしばらくたった日のこと、いつものように商店街を通っていると、
パトカーが止まりその周りに人だかりができていました。何事かとのぞいてみると、おじいさんの店の前でした。
周りの人に聞いてみると
「先日、この店の店主が若い女の人を刺した。
幸い女の人は逃げて命は助かった」といい、驚いていると
「さっきおじいさんが泣き叫びながら話す声が聞こえたんだが」
と更にこう続けました。「どうやらこの家のおばあさんが死んでしまい、
最愛だったおばあさんを誰かの中に存在させたくて、
おばあさんの皮膚を切り取って売り物に混ぜていたらしい。
それが意外に評判がよく、人が来てくれるようになり嬉しくなった。
だがその皮膚が底をついてしまったので新しい材料が必要になったらしい。
売り物を買って食べてた人は、たまったもんじゃない」


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