以前、学校で教師として働いていたときのことです。
教師にも日直というのがあり、
一日の終わりに校内の戸締まりに回ります。
私が勤めていた学校は、とても大きく、
まるで病院のような雰囲気のところでした。
私は放課後の見回りが嫌いでした。
とにかく生徒の帰ったあとの暗い校舎は不気味なのです。
たいてい校舎の戸締まりは一人で全部回ります。
ある日のことでした。
冬場でもうあたりは真っ暗だったので、
廊下の電気をつけては消し、
つけては消しながら戸締まりを確認していたのです。
ちょうどそこは1階で、廊下が右へ直角に曲がる所でした。
嫌になるほどたくさんの窓ガラスがあり、
ひとつひとつ鍵を確かめていたのですが、
おかしなことに気づいてしまいました。
私の前の大きな透明の窓ガラスに、
私が映っているのですが、それがどう考えても変なのです。
私のうしろ姿が映ってるのです。
そんなはずはないのです。
私のうしろは壁で、私のうしろ姿を、
目の前の窓ガラスに写し出せるはずはないのです。
その場所は、いわくつきの音楽室のそばでした。
いわくつきというのは、霊感の強い生徒に
私自身が注意されていた場所でした。
「先生、あそこは素早く通り過ぎて。
あの音楽室とつながってる道があるからね。」
音楽室というのは、特に何か事故などがあった
部屋ではないのですが、すみにある物置程度の小部屋が
「黒い」と霊感の強い生徒は言うのです。
私は、窓ガラスに映っている自分のうしろ姿に
気づかないふりをすることにしました。
どうしようもないし、鍵の確認をしないわけにはいかないので。
すると、突然、窓ガラスに映っている私の姿だけが
右にスッと移動していきました。
「な!」取り残されたのは私で、
ガラスには私の顔が写し出されていました。
なんだったのかわかりません。
ですが、そのあとは走って日直の校舎点検をし、
職員室に駆け込みました。
これは翌日、生徒にも話した事実です。
コメントを残す