中学校の教師をしていたときの不思議な話です。
夏休み、仕事を終え、そろそろ帰ろうとしていたときです。

私ともう一人のベテランだけが職員室には残っていました。

「最後校内を一回り点検してきますね。」
私はそう言って職員室を出ました。

まだ夕方のことでした。

1階の職員玄関に行くと、
なんと女の子のはくローファーがきれいに並べて置いてあったのです。

私はすぐに吹奏楽部の誰かの靴だとわかり、
音楽室に行きました。

もう職員は誰もいなくなるので、
校内に生徒が残ったまま戸締まりしてしまうと、
セコムが来て大騒動になってしまうから、
とにかく生徒を帰そうとしたのです。

音楽室は静まり返っていました。
人の気配などないのです。

きちんと戸締まりされていたので、
一応鍵を開けて中を確認しました。

誰もいないのです。

おかしいな、と思い、トイレを確認しながら
職員室に戻ってベテランに靴のことを報告しました。

「校舎のどこかにいるな。どれ放送しよう。」
ベテランはマイクを持ち、放送を始めました。

「校内にいる生徒は至急帰りなさい。
戸締まりしています。学校には誰もいなくなりますよ!」

ベテランは何度か放送を入れました。
10分は待ったでしょうか。

「どれ、もういないだろう。私たちも帰るとするか。」

ベテランの指示通り、職員室をロックし、
私たちは職員玄関に行きました。

ですが、やはりローファーはあるのです。

「大丈夫でしょうか?」
きっと置いていっただけだろう。大丈夫だ。」

ですが、私はもしものことが心配になってしまいました。

「もう一度、放送入れましょうか?」
すると、ベテランは、笑いながら言いました。

「そんなに心配なら、叫んでみるか?
おーい!!帰るからなー!!」

すると、職員室の方から
「わかりましたー」と返事が返って来たのです、、、。

このベテランはまったく霊など信じない人なのですが、
この時ばかりは、私と一緒にかたまりました。

「帰ろう!」

とくに、
その日セコムが来るようなことはありませんでした。