その日は季節外れの大雪が降り積もり、
私は除雪車に乗ってシーズン初の除雪作業へと向かった。大抵作業を行うのは交通量も減る真夜中となるのだが、
その日は季節外れの大雪で朝から
除雪車がひっきりなしに出動している状態だった。除雪作業に関しては住宅地の担当になると、
やれ雪かきのやり方が悪いとか、
この雪も持って行ってくれと注文されたり
苦情を言われたりする事も多く
あまりやりたくない仕事だったのだが、
その日はとある町道の除雪作業を割り当てられた。そこは既に冬季間通行止めとなっている道路であったのだが、
近日営林署の車両が入ることもあるので除雪をしてほしい
という依頼が入っていた。人も居ないし、雪だけがしんしんと降り積もる道路を
5キロくらい除雪するだけの仕事だったので気楽な物だった。除雪車で除雪を始めると、
最初は降りたての柔らかい雪が多かったのだが、
既に数か月前に通行止め区間となっている箇所に関しては
そこそこ深い雪が積もっている状態だった。そんな中をどんどんと山奥へと進んでいく。
自分の作業受け持ち完了地点の目印となる
オレンジ色の街灯までは明かりも何もない
暗闇が広がる世界である。故に少し寂しい気もしていたので、
車内では音楽を流しながら作業をしていた。すると、除雪車の燃料を午前中に使った人が
給油し忘れたのであろうか・・・燃料の残量があまりないことに気が付いた私は
携帯で給油を依頼することにしたのだが、
あいにくとそこは圏外だった。仕方が無いと思い無線を使って
雑音の中でどうにか給油を依頼する連絡を入れると、
先に市街地と幹線道路を優先するから、
そっちは後回しになるので30分~1時間くらいで
引継ぎ担当の同期Aが直接行くから待っていてください
とのことだった。しばらくすると再び雪が降り始め、
やがて凄い吹雪になってしまった。除雪車の中は暖房が聞いていて暖かいのだが、
外は猛吹雪だった。このまま誰も来なかったら凍死するかなとか思いながら
給油を待っていると疲れもあったのか、うとうととし初め、
路肩に除雪車を停車したままでしばらく待つことにした。すると、コンコン・・・という音で目が覚めた。
ん?と思い外を見てみると、作業着の男が立っている。私は給油車が来たのだろうと思い
「あ、すいません・・・お願いします」と言いながら
ドアを開けるも作業着の男は身動きすることもせず、
じっとそこに立っているだけだった。あれ・・・そこで私はおかしなことに気がづいた。
周りを見渡したのだが給油するための
タンクローリーも車両も何もいないのだ。あれ?と思い、先ほどの作業着の男を探すも
先ほどまでそこに居たはずの男は既に居なくなっていた。それから15分くらい経過して
ようやく給油のためのタンクローリーが到着した。同期Aの顔が見えたこともあり、
先ほどの不安感も無くなった私は
そのまま除雪を続けることとなった。そしてようやく自分の受け持ち担当の完了箇所となる
オレンジ色の街灯のところまでやってきた。給油用のタンクローリーで後方からついてきていた同期Aと
引継ぎを行って私はAが乗ってきたタンクローリーに
乗って帰ろうとしたところ。同期A「おいおい!あれ見ろよ!」
その声に驚き、同期の指さす方向を見てみると、
そこには冬の吹き付ける風の中でぶらんぶらんと揺れる
何かがぶら下がっていた。同期A「おい!あれって首吊りだろ!」
驚いた私たちはすぐに警察に連絡を入れたのだった。私達は第一発見者として色々と警察官から聞かれたが、
最終的に自殺であることは明確(死後1カ月以上は経過している)
であったので約1時間くらいで解放された。現場には自殺者が乗ってきたと思われる車両が放置されており、
それは既に雪で軽く埋まっている状態だった。警察官「冬季間通行止めになる前に入ったんでしょうね・・・
普段は交通量もそこそこある道だけど、
冬季通行止めになったら誰も通らないからな・・・」しかし街灯から降ろされたその男の着ていた衣服が作業着であり、
その作業着は私が先ほど除雪中に見た不審な男の着衣に
とても似ていたのは一体何だったのか・・・今となってはもう解らない。


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