あれは私が就活をしながら、
バイト派遣で働いていたときのことです。

当時他の派遣先で知り合った女性と仲良くなり、
お互いアパレルが好きということもあり、
舞浜から送迎バスが出ている
アパレルを取り扱う倉庫現場に行くことにしました。

そこには様々な服があり、彼女と私はテーブルは別れたものの、
同じチームでひたすら服をたたむという職務に割り当てられました。

初めての現場。初めて会う人ばかり。

お互いに頼れるのは自分達だけで、
なんとなく疎外感を抱きながらのスタートとなりました。

そして私達のチームでは他の派遣会社から来ている
古株の人がチームリーダーでした。

しかし……そのチームリーダーという女性の顔を見た瞬間
この人ヤバい! イッちゃってる!!”というのが第一印象でした。

私はいてもたってもいられず、一緒にいた彼女に耳打ちをしました。

ねぇ、あの人ヤバいよ。目がイッちゃってるよ。霊に憑かれちゃってるよ。
なんかさー、あの人の傍にいると激しい頭痛がするの。
絶対霊を背負ってるって」

霊がいると頭痛や激しい睡魔に襲われることを知り始めた私は、
そのイッちゃっていリーダーの傍に行くと激しい頭痛を感じていました。

一緒に行った彼女も私の中途半端な霊感の強さを知っていたため
「えっ!? マジで!?」と、ビックリしたようです。

ビックリしながらも「私にはわからないけど、何かあったらすぐに言ってね」と、
かなり心配してくました。

そして午後。

午前中はそのリーダーと別れての作業だっため、
私は普通に作業ができていました。

だけど午後からやることが変わり、
変わったおかげで私は恐怖の体験をすることとなったのです。

そのリーダーがイッちゃっている理由もわかりました。
彼女に男の子がくっついていたのです。

水子霊とは違い、確実に一度誕生して
3歳くらいで亡くなった男の子
でした。
(霊の姿は見えなかったけど、雰囲気でわかりました)

その男の子が悪さをしているせいで、
彼女の顔つきが完全におかしくなってい
たのです。

黒目は左右とも外側に向き、
最初は穏やかでもしだいにヒステリックになったのです。

それと同時に私の頭痛はひどくなりました。

そんな人と同じテーブルで作業をする私に
一度目の恐怖が訪れたのです。

“い、いやーっ!”思わず心のなかで叫び、
まるでハエか何かを追い払うかのように激しく
左腰付近を何度もはたいたのです。

そうです。私は実態のない男の子に見初められてしまったのです。
腰を払ったのは、その子が私の腰にタッチをしてきてからでした。

それから午後の休憩時間に一緒に行った彼女に
そのことを話しておくことにしました。

彼女は「怖いっ! でも私にはまったく感じないので、
社員さんに言ってテーブル変わってあげるから」と言ってくれましたが、
逆に私がおかしな人になってしまうので、そこではお断りをしたのです。

しかし……その男の子のちょっかいはひどくなる一方で、
そのたびに触られた腰を手ではたく行為が増えていました。

そしてついにその瞬間がやってきたのです。

今までは軽いタッチだけだったのが、
今度はパシッと叩いたようなあと、
私の腰にしっかりとした感触で触ってきました。

そのガッシリとした感触を体験した私は、
そこが職場であることも忘れ「もう、いやぁー!」と叫び、
奥の壁までダッシュで逃げました。

作業をしていた同じチームの人たちが一斉に私を注目していました。
それはももうワタシにはどうでもよく、壁にヘタレこんてしまいました。

はっきりと残るあの小さな手の感触が私の腰を見事に抜かさせました。

「大丈夫!?」仲のいい彼女が私に駆け寄り、
しゃがみこんだ私の肩を抱いて慰めてくれましたが、
あまりの恐怖で腰が抜け、まったく立てなくなったのです。

「待ってて。今、社員さんに話して場所を交換してもらうから」

彼女はそう言って立ち去りました。

結局彼女のチームは一人いないから、
ということでリーダーとはかなり離れて
仲のいい彼女と一緒に仕事ができましたが、
あの手の感触はしばらく残っていました。

とどのつまり、私は見事にその職場から出入り禁止を食らい、
2度と足を踏み入れることはなくなりましたが、
あの幼い男の子はまだあのリーダーにくっついているかもしれません。

その後リーダーの彼女がどうなったのかは不明ですが、
2度と関わりたくない人でした。

そして帰宅をして触られた腰を見てみると、
そこには子供サイズの手形が残っていました。

本当にもう2度と体験したくない出来事のひとつです。