これは私が中学生の頃の話です。

その日、母と私と妹の3人は車で
市内の祖母の家へ出かけていました。

夕方頃でしょうか、
祖母との用事も済ませ帰路についたのですが
母が道を間違えてしまい、いつの間にか
見知らぬ細い道に入っていました。

明らかに薄暗くぼろぼろの道だったため
なんとなく嫌な予感はしていたんですが、
霊感もなく霊的な体験もなかったため
特に気にしていませんでした。

ふと道の脇に目をやると、
墓石のようなものが目に入りました。

墓地にあるようなきれいなものではなく
ひびが入ったものや削れているもの、
そして横に倒れているもの。

よく見ると、ボロボロの墓石のようなもの
道の両脇に複数打ち捨てられているようでした。

この時点で私の嫌な予感はさらに強くなっていました。

さらにそこから100mほど進むと、
左手にかなり古く老朽化の進んだ建物がありました。

どう見ても今は利用されていない様子でしたが、
そこから1台の車が出てきました。

中に目をやると運転席に男性が一人
そして隣に白装束の老人が座っていました。

今思うと明らかにおかしい光景なのですが、
老人が穏やかな表情をしていたこと、
そして不思議と怖いという感情が起こらなかった
私は特に家族に報告するでもなく、
ただその車が通りすぎるまで見つめていました。

そしてその直後です、
突然背中に氷を入れられたような冷たさを覚えました。

物理的な冷たさを感じた数秒後に恐怖に襲われました

私はパニックになり
ただ「ここ嫌、早く、早く出よう!!!!!」と叫んでいました。

驚くことに妹も同じタイミングで
嫌だ!嫌だ!ここ嫌!!!」と叫んでいました。

異様だったと思いますが母は黙って運転し続けていました

そうして10秒ほど経った頃でしょうか
(体感としてはもっと長く感じましたが)、
右脇に神社がありそこで母がなにか小声で呟いていました

そして神社を通り過ぎるとふっと体に温度が戻ってきました

その後しばらくは3人とも無言でしたが、
ようやくいつもの家路に戻ると妹が
ボロボロの井戸があったよね」と言い出しました。

私も母もそんな井戸は見ていませんでした
見晴らしのよい場所だったので
二人とも見落としているわけはないのです。

それでも妹は井戸があったと言い張っていました

また母に神社で何を呟いていたのか尋ねると
知らなくていい」の一点張り。

そして白装束の老人、ボロボロの墓石については
私以外の2人は見ていない
ようでした。

私もなんとなくその話はする気になれず話していません。

ちなみに後日わたしが恐怖体験をした周辺の事を調べていると
老朽化の進んだ建物が戦時中に利用されていたもの
だということがわかりました。

特に資料があった訳ではないのですが
祖母が建物について知っていました。

ただその建物については特に何があった訳でもなく、
戦時中に兵隊が利用していた、ということしかわかりませんでした。

ボロボロの墓石、戦時中の建物、白装束の老人、井戸
特に関連性もないですがまとめて起こった出来事であったため
今でもふと思い出します。

しかし母は当時の出来事について深く語ろうとはしないため、
何が起きていたのかはいまでもわかりませんし、
この日の出来事が話題に上がる事もありません。