とある地方の神社での出来事です。
その日は、秋も終わり
冬の訪れが感じられる肌寒い日でした。
夕暮れ時には、風も強まりより
肌寒さも増してきました。
すっかり人気もなくなった神社に
母と小さな娘がやってきました。
母は30代半ばほど、
娘は保育園の制服姿です。
恐らく母が、仕事帰りに保育園に通う娘を
迎えに行った帰りであろうと想像されます。
ふと娘が神社の境内で
「焼き芋食べたい!」、
「さっきもらったお芋を焼いて食べよう!」と
言い出しました。
母の手にはスーパーのレジ袋のようなものに入った
サツマイモがいくつかあります。
母は少し困った顔をしながらも、
「さっちゃん、じゃあ、ここで焼き芋しようか!」と
優しく娘に微笑みながら、周りに合った落ち葉をかき集めます。
「さっちゃんも集めて」と
母に言われると娘も楽しそうに
母の真似をするかのように、
落ち葉をかき集めていきます。
周辺には落ち葉はたくさんあり、
すぐに山盛りの落ち葉が集まりました。
山盛りの落ち葉に母は持っていたライターで火を着けますが、
落ち葉が湿っているせいか、すぐに火が消えてしまいます。
何度か火を着けてもすぐに消えてしまうため、
母は持っていたライターのオイルを
落ち葉に振りかけます。
娘が「早く、早く!」と急かすので、
少し焦っていたのかもしれません。
すると、先ほどまで燻っていた落ち葉が
一気に燃え上がりました。
そこへ運悪く大きな突風が吹きつけます。
オイルを吸った落ち葉が娘に吹き付け、
すぐさま炎が娘を襲います。
驚いた母は「誰か助けて!」と
大きな声を上げるとともに
娘の炎を振り払おうとしますが、
突風のせいで母の衣服にも
オイルがかかってしまっていたようで、
あっという間に母も火だるまになってしまいました。
しばらくは母子の悲鳴が周囲に響いていましたが、
やがて声も小さくなり、聞こえなくなりました。
母は最期まで娘を抱きしめて
親子ともに息絶えてしまいました。
それから数日後、
神社では奇妙な噂が流れるようになりました。
夕暮れ時に誰もいないはずの神社から、
「ママ、熱いよ・・・」、
「ママ、苦しいよ・・・」と
女児の声が聞こえてきます。
それに応えるように
「さっちゃん、どこにいるの?」、
「さっちゃん、ごめんね・・・」と
娘を探す母の声が聞こえてきます。
どうやら抱きしめながら亡くなった母子ですが、
娘は自分が死んだことに気づかずに
神社をさまよっているようです。
母は別の世界に逝ったようですが、
そこで会えると思った娘に会えず、
神社に探しに来ているようです。
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