AちゃんとBちゃんというふたりの女の子がいました。
ふたりは家が隣同士で、小さな頃から親しくしていていました。Bちゃんの家はかなりのお金持ちで、
洋服やマンガなどをたくさん買ってもらって持っていたので、
AちゃんはよくBちゃんの持ち物を貸してもらっていました。Bちゃんはいつも快く貸してくれましたが、
ただひとつだけ決して貸してくれないものがありました。それはハッとするほど素敵なワンピースで、
Aちゃんがいくら貸して欲しいと頼んでも、Bちゃんは
「このワンピースだけはダメ。これを着た時だけは
私もAちゃんと同じくらい可愛くなれる気がするお気に入りだから」と言って断っていました。
実際にAちゃんはかなり可愛い女の子だったので、
「あのワンピースも他の服と同じように絶対私の方が似合うのに」と
心の中で悔しく思っていました。そんなある日、
Bちゃんが突然の事故で亡くなってしまいました。Aちゃんがお通夜に行くと、Bちゃんのお母さんは、
生前大の仲良しだったAちゃんにBちゃんの部屋のものを
何でも持って行ってと言いました。Aちゃんはたくさんの洋服やマンガなどをもらいましたが、
Bちゃんの部屋にあのワンピースはありませんでした。Bちゃんのお母さんに聞くと、
いちばんのお気に入りを明日のお葬式で着せてあげたいから
あのワンピースだけはあげられないと言われてしまいました。けれどもAちゃんはどうしてもワンピースを自分のものにしたかったので、
Bちゃんの形見だから燃やしてしまうなんて悲しい、
これまで何度も貸してもらったし、これからも自分がずっと大事に着るからと
嘘までついて、結局ワンピースをもらって帰りました。その夜遅く、Aちゃんが自分の部屋で寝る準備をしていると、
ふと何かの気配を感じました。気配のした先に目をやると、そこには窓の前に吊るされた
Bちゃんのワンピースがあるだけです。でも何かがおかしいような…
そう思ったAちゃんは突然違和感の正体に気づいて悲鳴を上げました。
ワンピースの袖から、細く白い手がだらんと垂れ下がっていたのです。Aちゃんの悲鳴を聞いて家族が駆けつけた時には
もう手はありませんでしたが、
その後Aちゃんが恐る恐る吊るされたワンピースを下ろしてみると、
後ろの窓に血のように赤い文字で「かえせ。ウソつき」
と書かれていました。Aちゃんは真っ青になって夜中にも関わらず
Bちゃんの家にワンピースを持っていき、
Bちゃんの家族に泣きながら謝りました。Bちゃんはお葬式でワンピースを着ることができて満足したのか、
その後Aちゃんの身の回りで変なことは起こらなかったそうです。
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