死者に届き続けた、
不可解な年賀状にまつわる話

ある年のお正月の2日、
63歳の伯母が心不全で急逝した。

伯母は明るく社交的な性格で、
交友関係が広い人だった。

日頃から家族や自身の健康に気を配っており、
とても元気で、実年齢より若く見えたため、
突然の訃報にはみんなが驚いた。

不思議な出来事が起きたのは、
他界から1週間ほど過ぎてからのこと
だった。

4日の通夜、5日の告別式・葬儀を無事にすませて、
松の内もあけたある日のこと。

家族の誰一人として聞き覚えのない名前の女性から、
伯母宛てに遅めの年賀状が届いた
のだ。

「お母さんに年賀状がきてる。
お父さん、この方知ってる?誰かしら

「さあ。でも、お母さんが亡くなったことを知らない人じゃないかな。
行き違いで届いたんじゃなくて」。

伯父と従姉はそんな会話をしたらしい。

伯母一家は鎌倉に住んでいたが、
差出人の住所は京都府だった。

文面の内容から、どうやら伯母の旧知の女性であり、
現在は闘病中で、京都市内の病院に入院していることがわかった。

お正月にもかかわらず、
わざわざ遠方からお見舞いに来てくれたことに対する
伯母への感謝の気持ち
や、40年ぶりの再会をなつかしむ思い
つづられていたそうだ。

何より伯父たちの心に引っかかったのは、
この40年間、伯母とは年賀状のやりとりさえしないほど
疎遠になっていた相手
だということ。

お母さんがこのお正月に知人のお見舞いで京都にでかけた?
そんなばかな。いったいお母さんはいつこの女性を見舞ったんだろう。

伯父たちも不思議に思ったようだ。

文面には「お正月」と書かれていたそうだが、
その年のお正月は伯母にとっては元旦と翌日の2日間だけ

そして、両日とも自宅で家族と過ごしていたとのこと。

しかも、もしこの年賀状が遅配などの配達トラブルなしに
スムーズに配達されたとすれば、届いた日から逆算して、
伯母の死後に投函されたことになる。

つまり、伯母が彼女の病室を訪れたのは、
自身が息をひきとってから年賀状が投函された間

ということになるのだ。

この京都の女性からの伯母への年賀状は翌年も、
その翌年も、そのまた翌年も届いたが、5年目にぷつりと途絶えた

この女性が誰なのか気になっていた従姉は、
1年前の年賀状に記載された電話番号に電話をかけてみたという。

しかし、その番号はすでに使用されていないものだった。

いったいこの女性は誰だったのか
伯母とはどういう関係か。

そして、彼女の病室を訪れたのは何者だったのか
いまだに謎である。