もう、三十五年以上経つのだろうか。
恭子はファミレスの外をふと眺めてみる。
梅雨末期の大雨で道路は渋滞、
災害警報のアラーム音がしきりに鳴り響く。
祖父の月命日もやがてくるが
故郷に帰らなくなってずいぶん経つ、
元々母親とは合わずそんな孫を可愛がってくれたのが
祖父だった。
あれは今思いだしても不思議でそして怖い体験だ。
恭子が小学校4年の夏だった、
その年は雨が以上に多く天候もはっきりしない
そんな天候が持病を持つ祖父の体調を悪化させていた。
元々大柄でどしっとした貫禄たっぷりの祖父だったが
リュウマチが悪化して前年の暮から
ほとんど歩けなくなっていた。
実の娘夫婦と同居していたが、
恭子は祖父が大好きだった子供にお
もちゃ一つ買い与えようとしない母親に代わって
育てたのが祖父だった。
そんな祖父の弱っていく姿をみるのは
子供心に悲しいものだが、
その年の初めから恭子は不思議な夢をみるようになる。
それは祖父が事故に合う夢や、
葬式やとにもかくにもあんまり心地いい夢とは言えず、
周りの大人にも話しても一瞥されるので
話すことはひかえていたのだが、
その年の六月下旬に謎の腹痛に襲われ緊急入院した。
入院した町の病院はド田舎の
あるくだけで廊下がギイギイなるおんぼろ病院だった。
ここで恭子は怖い経験をする。
それは入院して二日目のことだった。
外は梅雨の大雨深夜眠っていると
水道が出っぱなしの音が聞こえてきたのだ。
ザーザーザーザーとにかく看護婦も止めようとしないので、
しょうがなく起き上がり止めにいこうとしたのだが、
奇妙なことに廊下の非常灯はついておらず、
そのろうかのずっと先からザーザーザーザーと
水音がしている。
まるで夢でもみている感覚で
廊下を進んでいくと蛇口が全開の水道があった。
やれやれと思い蛇口を閉めふりかえると、
廊下のむこうから車いすの音がするのである。
それを押す人のスリッパのパタン パタンと
流石に怖さと恐怖にしゃがみこみそうにとゆうか
半分気を失いかけていると、その車いすが
恭子の視界に入るくらいに近づいた時のことである。
暗く非常灯もついてなのだが、
そこだけぽっと明るくなったのである目を凝らしてみると、
祖父の才吉が車いすに乗って座っているのである。
驚いて近づこうとした瞬間ぎょっとした。
祖父の周りに死神の黒装束を着た髑髏や
魑魅魍魎が祖父をかこむかこむように
たっていたのである。
そこで恭子は気を失ったようで目がさめるとベットで寝ていた。
恐怖のあまりすぐ退院したいとだだをこね
家に帰ったのだがそれから二日後、
祖父は恭子と入浴したのち倒れ
意識不明の重体のままなくなってしまった。
あの時伝えれば祖父は助かっただろうか、
その思いが恭子の心中によぎることがある。
祖父の葬儀は亡くなってから葬儀まで
雨が降りやむことはなくその年はその大雨で
さまざまな災害が起きた。
祖父が亡くなり大黒柱を失い
祖父頼りだった恭子の家はわずか五年で一家離散する。
今でもあの夏、祖父はなぜ自分のところにあらわれたのか、
なにを伝えたかったのか謎である。
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