中学2年生の時の話です。
この学年に進級した当初、
仲の良い子とクラスが離れ離れになってしまい、
新しいクラスには知り合いもほとんどおらず、
しばらくは馴染むことができませんでした。
そんな中、唯一と言っていい知り合いが、
小学生の同級生だったSさんです。
特別親しかったわけではないのですが、
Sさんもクラスから浮いていたのと、
私の好きな漫画をSさんも好きだったということから、
一緒に登校するようになりました。
ちなみに下校は、Sさんは帰宅部でしたが、
私は部活に入っていたので
部活の子達と一緒に帰っていました。
さて、新しいクラスになってから
2か月たって梅雨入りした頃、
新しいクラスでも数人の友人ができましたが、
新しくできた友人とは家が逆方向なので、
登校は相変わらずSさんと一緒でした。
さて、梅雨入りして毎日のように雨が降る中、
いつものようにSさんと一緒に登校していた時、
すぐ横に黒いワゴン車が止まりました。
私達二人はそのワゴン車を普通に通り過ぎ、
角を曲がります。
すると、先程のワゴン車が追いかけてきて
私達の隣に停車しました。
なんだろうと思ってそのまま通り過ぎると、
また私達が角を曲がるたびに追いかけてきて、
すぐ横に停車するのです。
さすがに薄気味悪く、
ちらりと運転席を見てみたのですが、
ブラインドが下りているのか
所謂遮光性ガラスなのか、
運転席はこちらからは見えません。
隣にいるSさんに、
「あの車おかしくない」
と聞くと、
「車?どの車?」
Sさんには見えていないようです。
私一人だけ真っ青になって、
少し足早になってどうにか学校に辿り着きました。
やたら速足の私を、
Sさんは不思議そうに見ていました。
学校の前では先生や生徒会の人達が傘をさして、
登校してきた学生に挨拶をしています。
知っている先生がいたのでその先生に、
「先生、なんかへんな車がいたんですけど」
とワゴン車を指差して訴えたのですが、
「車?どこにそんなもんが?」
と私の横を通り過ぎていった
黒いワゴン車を見ることもなく、
先生は怪訝そうにしていました。
当時の私は大混乱で、
混乱した頭のまま授業を終え、
部活動に滑り込み部員達に訴えました。
すると、去年同じクラスで
一番仲の良かった部員Fさんが、
明日雨なら一緒に登校しよう、
と言ってくれました。
そして次の日。
相変わらずの雨でした。
私とFさんは朝待ち合わせをして、
一緒に登校しました。
すると、前のほうにはSさんが傘をさして、
角を曲がろうとしていました。
追いかけようとしたその時、
私の横を黒いワゴン車が通り過ぎ、
Sさんの隣に停まりました。
Sさんは気づかない様子で角を曲がり切り、
黒いワゴン車はそのままの状態で停まっています。
「あの車?」
不意に、Fさんが言いました。
どうやらFさんには見えているようです。
私が頷くと、Fさんは歩くのをやめ
私もそれに合わせて止まりました。
そして私達が黒いワゴン車を見ていると、
しばらくして黒いワゴン車が角を曲がって消えていきました。
私とFさんは雨で濡れるのもかまわず走って追いかけ、
角を曲がると、やはり視線の先には
Sさんの隣に停止した黒いワゴン車が。
「あれは、あの子に憑いているのかな?」
Fさんが小さく呟き、私もそれに頷きました。
それから私達は二人で学校に登校し、
先生達に黒いワゴン車のことを話したのですが、
やはりそんな車は見ていないとのこと。
生徒会の人達も見ていないというばかりでした。
ただ、Sさんと同じくらいに登校した
園芸部の男子生徒がそういうワゴン車を見た
と話していました。
その後、雨の日はSさんにはずっと
黒いワゴン車が付きまとっていたのですが、
梅雨明けと共にワゴン車の姿は
ぱったりと見なくなりました。
3年生に進学した時、Sさんとはクラスも離れてしまい、
その後高校も別々になってしまったので、
Sさんが今も梅雨の時期に
黒いワゴン車に付きまとわれているのかは、
わかりません。
コメントを残す