雨の日になると、どうしても思い出してしまう
今まで誰にも話したことがない話だけど、
もう限界かも知れない・・・」

こう言って、以前の職場で知り合った
かつての友人Aがある雨の日に語ってくれた話
ふと思い出したので、書きますね。

友人Aは高校の頃、不良の先輩Bにイジメられており、
毎日使いっ走りにされていました。

その年は空梅雨でクソ暑い日が続いており、
当時は学校にエアコンがない時代であったこともあり、
先輩BはAにアイスクリームを奢るように強要されたり、
暑さでイライラした先輩Bの憂さ晴らしに
殴られる日々を送っていたところ、
不良仲間のCから地元で知る人ぞ知る
雨ごい」の民話を知り、肝試しのついでに
「雨ごい」を実行することにした
そうです。

その「雨ごい」とは、
地元の神社にある雨神様の湖の湖を汚して、
水神を怒らせて雨を降らせるというモノ

本来なら神社の神主が行うべき儀式なのだとか。

それを面白半分にやろうと思い立ったDQNなB先輩は
C先輩とAに缶や残飯、ゴミを用意させて、
夜中に神社に入り込み、雨神様の湖に投げこみました

しかしながらと言うべきか、当然というべきか、
雨が降ることはなかったそうです。

「つまんねえ、なんも起こらんじゃん」と言いながら
Aを小突いているB先輩に
やっぱり、もっとヤバイ物を投げ込まないといけないんじゃね」と
C先輩が言いました。

それを聞いたB先輩はよからぬ事を思いついた
と言わんばかりのニヤケ顔をして、
AとC先輩を残して繁みの中に入っていったそうです。

しばらくすると、
身の毛もよだつ獣の断末魔が聞こえてきたそうです。

Aの嫌な予感を寸分も裏切ることもなく、
B先輩は猫の死骸を片手に戻ってきて、
湖に放り込んだ
そうです。

それを見たC先輩は
「オメエはマジでパねえ奴だわ」と
へらへら笑っていたようです。

Aは唯々ドン引きするしかありませんでした。

偶然というか、猫にとっては運がないことに、
程なく雨が降り始めました。

BとCは武勇伝のネタが出来たと上機嫌になり、
Bの所業にドン引きして茫然としていた
Aを置いてきぼりにして湖から去っていったそうです。

我に返ったAは恐ろしくなり、
気休めに神社でお参りをしてから帰りました。

それからは嘘のように連日雨が降り続き
遂には豪雨災害まで起こる始末でした。

偶然というのは恐ろしいもので、
その豪雨災害で先輩Bは亡くなりました

それ以来、先輩Cとも疎遠となり、
こうしてAは今まで自分をイジメていた不良から
解放されることになりました。

しかし雨神様がAすらも赦さないと言わんばかり、
Aの行くところ、雨や豪雨災害に見舞われることが
多くなった
のだそうです。

Aの体験を知らない周囲から「雨男」と茶化されますが、
Aにとっては笑えない話
です。

Aは偶然だ、気のせいだと思いながら、
これまで禁忌の体験を語ることなく生きてきたようです。

豪雨災害の被害者の話を聞くたびに
「自分のせいではないのか」

ふと錯覚してしまうこともあるのだとか。

私が退職して以降、Aとは音信不通となっており、
今はどうしているかは知る由もありません。

動物の愛護及び管理に関する法律や
住居侵入罪があろうがなかろが、
人として、こんな事はやるべきではないのは
言うまでもないことです。