これは私が高校生の頃に、
自宅で経験した話です。
私の家は平屋の一軒家で、
私と父と母、妹の4人で暮らしていました。
その年はとても蒸し暑く、
異常気象と言われていた夏の出来事です。
私は夜ご飯を食べ終わっていつものように、
家族揃ってテレビを見ていました。
母が玄関の方に誰かがいると突然言い出したので、
みんなびっくりしました。
父が玄関に行きドアを開けると、
そこには誰もいませんでした。
戻ってきた父は母に、
なぜ誰かがいると思ったのか聞きました。
すると母はここ数週間玄関からよく音がするし、
人が歩いているのを見たと言うのです。
父が家の周りをうろついている奴が居るのかと問うと、
母は違うと言いました。
外じゃない、家の中を歩いているんだと言いました。
私も含め家族一同、
顔から血の気が引いていきました。
母が言うのはここ数週間家の中を誰かが歩き回っており、
トイレに入っている時も外にいる気配がするというのです。
私は怖くなりその日から数日感、
トイレもお風呂も入るのを
ためらうようになってしまいました。
それから一週間ほどたった日のことです。
私は夜ご飯を食べ終わっていつものように、
家族みんなでテレビを見ていました。
一週間前の母の話などすっかり忘れてしまっていました。
ひとしきりテレビを見るともう寝ようと思って、
歯を磨きに洗面台に向かいました。
洗面台で鏡を見ながら歯を磨いていると、
一週変なものが鏡に映りました。
着物のようなものが、
一週ひらりと鏡に映ったのです。
私は振り返って玄関の方を見ましたが、
なにもありません。
気のせいかと思ってもう一度鏡を見たその時、
私は見てはいけないものを見ました。
鏡に映ったのは着物を着て
歯が真っ黒く塗られた女の人でした。
女の人はこちらに顔を向けて笑顔を見せ、
正座しお辞儀するように頭を下げていました。
しかし笑っているとは言え歯が真っ黒なうえに、
そもそもなんで家の中にいるんだという驚きで
私はパニックになってしまいました。
私が大声で叫ぶとすうっとその女は消えて行きました。
後で母に詳しく聞いたのですが、
数週間前にお彼岸でお墓参りに行った時に
お墓の影で私が見たのと同じ着物の女を見たのだそうです。
そして見たその日から、
家についてきてしまっていたのだと言われました。
私はそれ以来あの着物の女を見てはいません。
あの女は何のために、我が家を徘徊していたのでしょうか。
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