不景気が続き、地方では町工場が廃業になってしまったところが沢山あります。廃業になっても、工場の建物を解体するにはお金がかかりますから、放置されているところが多いのが現状です。

そんな廃工場に、夏になると地元の若者を中心に肝試しをするということが行われていました。ある時、衣料を加工している工場に地元の若者が入ってみると、中は想像していたよりも綺麗な状態です。

工場に入るときだけ、窓を壊したものの、それ以外は今も稼働をしているような状態になっています。不思議に感じたものの、若者たちは興奮をしていたので気を留めずに、工場内を走り回ったり持ち込んだ飲食物でパーティーをしてました。翌日、明るくなったのでこっそり入った窓から出ようとすると、工場で働いていたとような作業員を着た人がいました。

怒られると驚いたものの、胸元に名前が縫い付けられた作業服をきたその作業員は知らないふりをして、去っていきました。何となくその表情が怖かったので、それからはその廃工場には足を向けませんでした。

その後、数か月した頃に廃工場が正式に解体されることになりました。忍び込んだ若者はアルバイトとして解体作業に参加をすることになりましたが、以前忍び込んだ時とは全く違った荒れ果てた状態になっています。

たった数か月でここまで荒れるのはおかしいと考えていたら、工場の控室に作業服が残っていました。作業服には以前忍び込んだ時の名前が縫い付けられていて、さらに服の中にはやせ細った白骨遺体が残っていました。

その後、警察が司法解剖をしたところ、死後数年はたっていて、その工場の責任者だということがわかりました。地元の新聞にも掲載されましたが、写真は間違いなく廃工場で見かけた作業員です。

自分が死んだことに気づかずに、工場を掃除してみまわっていたが、力尽きたのではないかと考えると怖さと切なさを感じさせます。