駅前やイベントなどに、たまに似顔絵を描いて販売するというサービスを行っている人がいます。ある時待ち合わせをしている駅で、約束の時間を間違って早く到着してしまった人が、暇つぶしに似顔絵を描いてもらうことにしました。

誰も並んでおらず、駅の端っこでぽつんと座っていたので、最初はためらいがありました。しかしあまりに暇なので、お願いをしてみると不愛想な男の人がパイプ椅子に座るように顎で示しました。

お金を払うのに、サービスもしないなんてと嫌な気持ちになったものの、すでに座っていたので文句は言えませんでした。男は鋭い目つきで顔をジロジロと見た後、にやりと嫌な感じで笑ってから、画用紙に向かいました。

筆をとってからは、一度も顔を見ようとしないので、これは大丈夫なのかと不安になりながら待ちました。出来上がった似顔絵は、驚くほど似ていたので、すごい才能がある画家だと嬉しくなりました。

そのため、待ち合わせをしていた友人がやってきたら、お前も書いてもらったらいいと進めました。友人はあまり気乗りがしないものの、描いてもらったところ、顔の半分にやけどのようなシミがついた状態で描かれてしまいました。

あまりにひどい描かれ方ので気分を害しましたが、面と向かって文句を言うのがためらわれたので、お金を払って渋々、絵を受取って帰宅しました。数日後、二人は車を運転していたときに事故に巻き込まれ、最初に似顔絵を描いてもらった男は亡くなりました。

一方で顔にシミが出来た似顔絵を描いてもらった友人は、命はとりとめたものの同じ部分に大きな火傷ができてしまいました。似顔絵というのは魂が込められたものなので、安易に描いてもらわないほうがいいのかもしれません。