ドアの鍵穴を覗く癖があった彼女は、その夜も何気なく玄関の鍵穴を覗いた。いつもなら暗い廊下がぼんやり見えるだけなのに、その日は何か違う。黒い影がじっとこちらを見ているような気がした。一瞬で目を離し、心臓が早鐘を打つ中、ドアを叩く音が響いた。
誰かが立っているのかと思い、恐る恐る「誰?」と尋ねたが、返事はない。鍵穴をもう一度覗くと、今度は影が近づいてきて、目のようなものがはっきりと見えた。慌ててドアから離れると、叩く音が止まり、静寂が戻った。でも、それ以来、鍵穴を覗くたびに何かが見ている気がして、彼女はドアに近づけなくなった。


コメントを残す