雨の降る夜、彼は駅からの帰り道で赤い傘を持った女を見た。暗闇で傘だけが浮かんでいるように見え、不思議に思いながら通り過ぎた。だが、次の角を曲がると、また同じ女が立っている。足音もなく、傘の下の顔は見えない。急いで家に向かったが、振り返るたび、女が少しずつ近づいてくる。
家に着き、鍵をかけた瞬間、窓の外に赤い傘が見えた。カーテンを閉めても、ガラスを叩くような音が響き、眠れない夜が続いた。ある晩、意を決して外を見ると、傘が庭に倒れているだけだった。安心したのも束の間、背後で傘が開く音がした。振り返ると、部屋の中に赤い傘が浮かんでいた。
近所に聞くと、昔、雨の夜に傘を持ったまま消えた女の噂があったらしい。彼は今、雨が降ると外に出られなくなった。


コメントを残す