銀座のバーで働く店員が、ある夜、閉店後に奇妙な客を見たと同僚は語る。ネオンが消えた深夜、カウンターに座る男が現れ、言葉を発さず、ただグラスを見つめていた。男が去った後、グラスに黒い染みが残り、拭いても消えなかった。翌夜も男が現れ、今度は染みがカウンターに広がり、店員の手に触れそうになった。閉店後、店内に低い笑い声が響き、鏡に男の影が揺れる。ある夜、男は来なかったが、染みが独りでカウンターに浮かび、店員の名を呼ぶような囁きが聞こえたという。

常連が言うには、「銀座のバーには、昔、消えた客がいたらしい」。店員の店では、夜ごとに染みが揺れ、静寂が奇妙に深まる。