私が小学生の頃、こっくりさんが流行しました。

でも、学校でやると先生に怒られるし、
家でも親に見つかると怒られるので、
共働きの両親が帰ってくるまでの間に
私の家でやろうということになりました。

私の家には仏間と続き間の和室があり、
そこを会場とすることに。

さっそく興味津々な友達が集まり、
こっくりさんにいろんな質問をしては答えに一喜一憂して、
ほとんど占いゲーム感覚で楽しんでいました。

そこで、ふと疑問に思ってしまったのです。

こっくりさんってキツネなのに
なんで人の言葉が分かる
のだろう?

人の言葉が分かるなら、
もしかしてしゃべることもできるんじゃないの
かな?

私の疑問にみんなもそう言われれば…、
という空気になり、こっくりさんに聞いてることにしました。。

こっくりさん、こっくりさん、
もししゃべれるのなら声を出してください―――

そう言った瞬間、「うおぉー…」という
唸り声のような声が部屋中に響き渡ったのです。

隣の仏間の戸を開けても誰もいません。
でも、確かに声はしたのです。

時間にすればほんの1、2秒だったはずです。

しかし、いつまでも唸り声の余韻が響いているような気がして、
みんな涙目で真っ青になりました。

母が家のドアを開ける音でみんなはっと我に帰り、
逃げるように帰っていきました。

それ以来、一度もこっくりさんはしていません。

あれは一体なんの声だったのでしょうか。
今でもその答えは分かりません。

ただ、あの地の底から響くような低い唸り声と、
部屋を包んだ冷たく重苦しい空気
何十年経った今も忘れられません。