20年くらい前の話。まだ大学生だったので、
ツーリングに出掛けた。

特に目的地は決めず、行ける所まで行ってみるみたいな
勢い任せの旅行だった。

1日走って、とある田舎で夜に峠に差し掛かった
峠は暗くて、街灯もなかった。

ただ、しばらく行くと古びたバスの待合所があった。

待合所は古かったが、一応屋根もついてて、
ベンチみたいなのもあった。

疲れてたし、そこで仮眠してまた明日走ろうと思った。

夜の山は本当に暗いし、鳥か何かよくわからない声がしてて
不気味だったけど、キャンプみたいで年甲斐もなくワクワクしていた。

コンビニで買った飯を食って、ベンチに横になると、
そんな状況でも結構寝れる。

3時間ぐらいたって目が覚めた。あの鳥か動物かよくわからない声
すごくうるさくて。文字にするのは難しいけど、「ンー」とか
ヌー」とかそういう低い音だった。

目も覚めてしまったし、
タバコでも吸おうかと思って待合所から外に出た。

田舎に住んでる奴ならわかると思うけど、
月が出てると結構明るいんだ。

それで、見えたんだけど、来た方とは別の方向から何か来る。
真っ白い円柱みたいなやつ

どうやって動いてるのか知らないけど、
くねくね左右に揺れながら、暗い峠道をこっちにやってくる。

何じゃありゃ、と思ったけど、例の「ンー」とか「ヌー」とかいう
鳴き声がそいつから出てると気づいて、腰が抜けそうになった。

距離と音量が何かちぐはぐなんだけど、
そいつの鳴き声だとなぜかわかった。

正体はよくわからなかったけど、何にしろヤバいと思って、
バイクもそのまんまにして反対方向に走って逃げた。

峠道を下りたところにコンビニがあって、
そこで夜明けまで暇をつぶした。

バイクをそのままにできなかったし、
夜が明けて停留所まで戻ってみた。

バイクとか金とかは無事だったけど、
前の晩に食ったコンビニの弁当とかお菓子類とかが荒らされてた。

野良犬がやったと言われればそうなんだけど、
ひょっとしたらあの白いやつがやったのかもと思ったらすごく怖くなった。

気持ち悪くてツーリングは中止。
バイクもその時の荷物も全部処分した。

何年かたって、ネットの掲示板で
「くねくね」っていう都市伝説を見て、
あいつのこと思い出した。

「くねくね」は田園に出るって話だけど、
山にも似たような何かがいる。