私の地元である長野県の南信地方には、
「おじろくおばさ」という奇妙な風習がありました。
私は祖父母からそれらの奇妙な風習の話をよく聞かされたものです。
「おじろくおばさ」は、長野県の南信地方、旧神原村で行われていました。
この集落では、長男だけが戸籍を持ち、次男以降の男の子や、
女の子は産まれても戸籍を持つことが出来ず、
長男の召使の様に働くことになります。
なんと、戸籍には『厄介』と記されるのです。
当然、必要な教育は受けられず、結婚や独立などは出来ませんでした。
周りの大人達も、本人も「おじろくおばさ」になるのが当然だったため、
彼らは何の楽しみも無く、長男にただ尽くして老いていくのでした。
長男が病気などで亡くなると、次男が長男役割を担い、
他の兄弟姉妹が尽くすようになります。
「おじろくおばさ」は人付き合いもまともに出来ない事が多く、
万が一、村の外に嫁いだりしても、上手くいかずに出戻る事が多かったそうです。
中には挨拶すらまともに出来ない人も居たそうです。
教育をきちんと受けておらず、家の中だけの仕事をしていては当然の事です。
私達の住む周囲の村落の人間は、
挨拶もしない「おじろくおばさ」をたいそう奇妙な目で見ていたそうです。
こんな事は大昔の事だと思われがちですが、
こうした風習は、なんと昭和中期まで続いていて、
昭和40年代まで「おじろくおばさ」が実在していました。
今のように文明の発達や情報網の普及が無い時代の悲しい話です。
2015年12月5日 at 12:37 AM
その昔仕事の関係で長野県に赴任していたというひとからおじろくの話を聞いたのは、いまから六年ほど前になる。もっとも当時はその五十代の話し手も聞き手の自分もおじろくなどという呼称は知らず。その”未婚の使用人”といっしょに鯉釣りに出かけていろいろと指南を受けて、また器用に鯉の洗いを調理してくれたとか。”都市伝説”などといういかがわしい呼び名で括られるから実在を疑われてしまう。